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プロフィール

coquito

  • Author:coquito
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WBCプエルトリコ代表 総括

 
2009年3月17日、プエルトリコがアメリカに5-6でサヨナラ負けを喫しベスト4進出の夢がついえた時、地元のマスコミは一斉に監督のホセ・オケンドを批判した。
「前回と全く同じじゃないか。」「何も学習していない。」
2006年の第1回WBCでもプエルトリコはベスト4をかけた最後の試合で、第1ラウンドでコールド勝ちしたキューバに敗れた。2009年も同じようにアメリカに一度コールド勝ちしながら再戦となったベスト4への切符を掴む試合で9回の2点差リードを守り切れずまさかのサヨナラ負け。あと一歩のところまで行くものの最後は詰めが甘いプエルトリコ。またかというファンの失望感と野球王国であるプライドを2大会連続で傷つけられた悔しさがオケンド監督にぶつけられた。

2012年10月、プエルトリコのプロモーターであるMB Sportsが第1次ラウンドの開催権を獲得したことが伝えられた。これで3大会連続してサンファンは開催地となったわけだが、権利獲得にはドミニカ、ベネズエラとの獲得合戦があったようだ。しかし過去の実績や資金面の調達などにより最終的にはWBC機構はプエルトリコを選択した。MBスポーツが獲得に成功したポイントは地元サンファン市に100万ドルの資金的補助を約束させたことにあったようだ。実はサンファン市はこの後11月に市長選挙を控えており、再選を狙う当時の現役市長はイメージアップのためにもWBCの開催は願ったりかなったりという相思相愛の末の誘致だった。

2012年11月、プエルトリコ野球協会のイスラエル・ロルダン会長が第3回WBCのプエルトリコ代表監督はエドウィン・ロドリゲスであると発表した。エドウィン・ロドリゲスは2010年、プエルトリコ人として初めてMLBの監督になった人物であり、ウィンターリーグでもヒガンテス・デ・カロリーナの監督として名をはせている人物だ。温厚で人望も厚いロドリゲス監督は第3回を期待するのにふさわしい監督と言えた。

代表選手は、まずカルロス・ベルトラン、ヤディアー・モリーナ、アレックス・リオスのMLBのスター選手3人が発表され、残りの選手は大会寸前の2月20日に発表された。今大会のプエルトリコ代表選手の特徴として、”バランス”が挙げられた。ベテラン、若手、MLB、ウィンター・リーグ、アジアなど、様々な選手を選択した。平均年齢は29.8歳、第2回大会の31歳からやや若返った。ただ一つ特徴を挙げるとすればウィンターリーグでプレーした選手を積極的に選んだことだ。バルデスやフィゲロアのベテラン選手などロースター28人のうち20人が今シーズンのウィンターリーグでプレーした選手だった。これはウィンターリーグでプレーしてコンディションの良い選手を選ぶというロドリゲス監督の意向だった。

コーチにも同様のポリシーで人選され、カルロス・バエルガ、ホセ・バレンティン、ホスエ・エスパーダ、ホセ・ロサードなどウィンターリーグで監督、コーチとして現場を知っている人選だった。

2013年3月、日本では既に第1ラウンドが始まっていたころ初めてのキャンプを行った。ロドリゲス監督は非常にバランスの取れた良いチームであることを強調したが、投手陣には不安が残ることをコメントした。ローテーションの4人は前年MLBでプレーした選手はおらず、そのうち3人はアジアでプレーした選手だった。参加が噂されていた元MLBのエースピッチャーであるハビエル・バスケスも直前で不参加がアナウンスされた。

しかしながらプエルトリコの野球ファンは4年に1回のこの大会に非常に期待しており、プエルトリコラウンドのチケットの売れ行きは好調だった。プエルトリコ代表の試合は、対ドミニカ戦、対ベネズエラ戦はソールドアウト。野球ファンなら誰もが見たいと思わせるベネズエラ対ドミニカの強豪同士の対戦も席が埋まった。

ところがこのプエルトリコラウンドのC組は”死の組”と呼ばれドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコのうちの1つが第1ラウンドで消えるのはあまりにも惜しいと言われた。そして当初ドミニカにはアルベルト・プホルス、ベネズエラにはフェリックス・フェルナンデスがクレジットされており、地元紙でさえプエルトリコの第2ラウンド進出は非常に難しいとの予想だった。

しかし、プエルトリコは興行権を獲得したことにより試合の組合せにメリットを生かせた。ロドリゲス監督が第1ラウンドで最も重要な試合とした初戦には試合勘を掴むためにまず戦いやすいスペインとの対戦を組んだ。一方のベネズエラは初戦の対ドミニカ戦を落とすと波に乗れず次のプエルトリコ戦でも敗戦、早々と優勝候補が脱落する事態となった。プエルトリコは初戦のスペイン、ベネズエラと連勝しドミニカと共に第2ラウンド進出を果たすことができた。

続く第2ラウンドでは第1ラウンドで苦戦したアメリカと対戦することになった。しかしながらこの試合で大差で敗戦し敗者復活戦に回ることになった。負ければ終戦というイタリアとの試合は非常に苦労したものの相手のミスにつけ込み何とか逆転を成し遂げた。そしてベスト4進出をかけた試合でアメリカとの再戦となった。アメリカ戦は非常に拮抗した試合ながらワンチャンスを生かしたプエルトリコが何とか逃げ切って勝利。前回、目の前でサヨナラ負けを見たJ.C.ロメロが最後の打者をセンターフライに打ち取った時に見せた跪いて両手を挙げたガッツポーズは今大会の名場面の一つとなった。

そして迎えた準決勝の日本戦。プエルトリコは意外にも日本を研究していた。日本で投げたオーランド・ロマン、ジャンカルロ・アルバラードから日本のバッターの特徴が伝えられた。以前日本でプレーしたことのあるイラム・ボカチカからは電話で日本の投手についてのアドバイスがあった。また3年前からプエルトリコでプレーする日本人選手と対戦してきている経験から、日本代表を想像するのもそれほど困難ではなかっただろう。昨年韓国で投げたマリオ・サンチアゴが先発したのも幸いだった。そして大会2連覇を成し遂げている日本に接戦の末勝利した。試合後に発売された日本の雑誌に、「伏兵プエルトリコにまさかの苦杯」と書かれていた。確かに日本からすればプエルトリコは伏兵だっただろう。しかしこれまでにプエルトリコはベネズエラ、アメリカと優勝候補を倒してきたことを日本は完全に理解していなかった。地元紙にはこの日本戦での勝利は過去のプロが参加した大会での最も記憶に残る試合として挙げられた。

決勝のドミニカ戦は完全に力負けの形になった。投手陣の不安がまさにここで出た形となった。しかし、あと一つで偉業を逃したもののこの敗戦を批判する地元メディアはもちろん皆無だった。むしろチーム打率が.216のチームを決勝まで持ってきたロドリゲス監督の手腕が大きく称えられた。ロドリゲス監督は自分の仕事としてキャンプ初日に全選手に個々の役割を説明した。これにより選手は自分のミッションを把握、試合に集中することができた。

また、この準優勝の大きな立役者としてキャッチャーのヤディアー・モリーナが挙げられた。経験の少ない若手投手を巧みにリードし、”試合を作った”のは紛れもなくモリーナの手腕だった。大会のベストナインに選ばれたが、打点0でありながら選ばれたところを見ても明らかにチームリーダーとしての活躍が評価された。

今大会の準優勝の鍵となった試合は私が思うにマイアミでのイタリア戦とアメリカ戦だ。イタリア戦は相手の拙い守備に助けられて逆転勝ち、非常に幸運な試合だった。アメリカ戦は前回大会を思わせる接戦ながら何とか逃げ切った。アメリカは、ジャンカルロ・スタントンがケビン・ユーキリスなら、エリック・ホズマーのところでデビッド・ライトが出てきたならおそらく前回のVTRを見るように負けていただろう

最後に今後に向けてのコメントを。
大会中にエドウィン・ロドリゲス監督は公式会見の場で1989年からプエルトリコ人も対象となったMLBのドラフト制度に入ったことについて言及した。以前はスター選手を輩出してきたプエルトリコが、最近元気がないことに対するコメントだ。
「みんなプエルトリコはドラフトの影響でプエルトリコの野球が衰退したという。しかし20年も前に始まったシステム。これを言い訳することはできない。今トーナメントでこうやって勝っていくことでプエルトリコの野球を証明していかなくてはならない。」

この大会後、地元野球ファンやマスコミの中では非常に前向きな声が多かった。次回大会の2017年に備えるプロスペクトが多いからだ。実際今回のメンバー構成でさえ将来を見越した選出との見方が多かったにもかかわらず、準優勝という成果を成し遂げることができた。おそらく今後のWBCでもプエルトリコが優勝候補の筆頭になることはないだろう。しかしこのような予想が全く意味を持たず、スター軍団ではなくてもトーナメントでは勝っていくことができることを自分で経験することができたプエルトリコ。この大会後に地元紙はこぞってMLBのプロスペクト選手の特集を組んだことなどを見ても、4年後への期待は選手、ファン、マスコミのすべてにおいて非常に大きい。

この2週間はプエルトリコが一つになった。サンファン市の警察の統計によるとWBCの期間中のサンファンでの犯罪数が例年に比べて減少し、サンファン市当局は「このままずっと大会が続いてほしい。」と異例のコメントを出した。プエルトリコ内ではWBC関連のグッズが売れに売れ、特に価格の高いユニフォームはほとんどの店で売り切れという事態となった。

こうやってWBCという大会が多くの人に恩恵をもたらすことができることをみんなが身をもって感じることが、このWBCを今後大きく育てていく最も効果的な糧となるだろ。
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